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福岡地方裁判所 昭和61年(わ)1348号 判決

判決主文

被告人を懲役二年六月及び罰金一億二〇〇〇万円に処する。

被告人において右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡市中央区薬院四丁目二番三号において、金融業を営むものであるが、

第一 昭和五七年分の実際所得が一億三八五一万五九八九円であったにもかかわらず、昭和五八年三月一五日、福岡市中央区天神四丁目八番二八号福岡税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一九七万四四五五円で、これに対する所得税額が二四二万三〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正当な所得税額八八三七万六〇〇円と右申告税額との差額八五九四万七六〇〇円を免れ

第二 昭和五八年分の実際所得が二億六三二九万九三二三円であったにもかかわらず、昭和五九年三月一五日、前記福岡税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二八五三万四六二四円で、これに対する所得税額が一一二一万八七〇〇円である旨の虚偽の所得確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正等な所得税額一億八二一七万円と右申告税額との差額一億七〇九五万一三〇〇円を免れ

第三 昭和五九年分の実際所得が一億六七三八万六三二〇円であったにもかかわらず、昭和六〇年三月一五日、前記福岡税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二九〇六万三三七〇円で、これに対する所得税額が一一二三万三八〇〇円ある旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正当な所得税額一億三九三万二四〇〇円と右申告税額との差額九二六九万八六〇〇円を免れ

たものである。

(適用した罰条)

1 該当法条

所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)

2 併合加重

懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最重の判示第二の罪の刑に法定の加重)

罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項

3 労役場留置

罰金刑につき刑法一八条

4 執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

(懲役刑につき執行を猶予した主たる理由)

1 動機は将来のための資産蓄積という専ら自己の利欲のためのものであって大いに非難さるべきものではあるが、例えば遊興費捻出がためなどといったたぐい、性質のものではなかったこと

2 手段、方法も、確定申告による納税制度を悪用したことにかわりはないが、稚拙な、いわゆるつまみ申告が中心であったこと

3 脱税額は三億五〇〇〇万円近くに達し、そのほ脱率は九三・四パーセントにも至っていて甚だ悪質であるが、修正申告をし、修正申告に伴い納付すべき税額六億四八五万余円に対し、現在、五億六五六四万余円、約九三パーセント強を納付し終わり、残余も近い将来、遅くとも昭和六三年一月中には完納の予定であり、そうであれば、本件国家課税権侵害による被害はほぼ回復されたものというべきこと

4 反省の様子が顕著で、最近、企業を有限会社組織にし、経理事務を改善したこと

5 新聞、テレビ、週刊誌等によりすでに相当の社会的制裁を受け、また、相当の経済的制裁を受けたものであるが、いま、これに罰金一億二〇〇〇万円を科すだけにとどまらず、直ちに懲役刑に服さしめることとするときは、いささか苛酷に過ぎることとなること

裁判所書記官 下川高範

(裁判官 井野三郎)

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